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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第7章 隠しきれないもの

早めに食事を切り上げると、「ごちそうさま」と手を合わせる。盛られた分のご飯の半分を食べたところで手を合わせた。
箸を置いたわたしの手首を、春ちゃんが掴む。

「咲、待って。もう少し食べられない?」

春ちゃんは心配そうにわたしを見つめる。
真っ直ぐな瞳と手を振り切って、首をぶんぶんと横に振った。

「やだ、いらないの。もう食べられない」

自分でもわがまま言っているのはわかっているけれど、優も春ちゃんも、今のわたしの気持ちを察してか、何も言わなかった。
食卓の空気を濁してしまったことが嫌で、部屋にこもる。
食卓では、春ちゃんと優が何か話していたけれど、何の話をしているのかまではわからなかった。

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