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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第8章 本当の話をしよう

「うん、家族3人」

春ちゃんは、満足気に頷きながら呟いた。

『家族3人』

そのセリフを噛み締めているようだった。
右手は優と、左手は春ちゃんと。
わたしも、『家族3人』を噛みしめる。

「……これ。お疲れ様」

優は片手をわたしと繋ぎながら、ビールと焼きそばが入った袋を春ちゃんに見せた。

「うわぁ、優。わかってるねぇ」

「春斗、下戸だから1本だけな。これから、花火の穴場に行くぞ」

「穴場?」

「病院の屋上だ」

「それなら、ビールは家までお預けだね」

「ねぇねぇ、ゲコってなあに? カエル?」

「カエルなわけなかろう。酒が弱い人のことだ」

「咲はほんとに……おもしろいねぇ」

「春ちゃん、お酒弱いんだね」

「うん」

話しながら、歩き出す。わたしは優と春ちゃんに手を引かれる。
下駄から響く音が、幸せの音のような気がして、歩くだけで胸がいっぱいになっていた。

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