テキストサイズ

優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第8章 本当の話をしよう

「春ちゃん、やめても先生してる。先生もして、わたしのお母さんもしてる」

咲に『お母さん』と言われて、俺は笑った。
奥で優も、花火を見上げながら少し笑ったのが見えた。
咲は、真剣な目のまま、俺のことを見つめる。
俺も、咲の目をじっと見つめ返すと、咲は口を開いた。

「それと、春ちゃんは優と一緒に、わたしの未来を繋いでくれた」

一段と、大きな花火が上がる。

その言葉を聴いて、何かに打たれたような衝撃が走った。
心の奥深くに、花火の音が響く。
咲に気づかされる。

繋がれなかった未来ばかりに目がいって、繋ごうとしていた未来と、繋いだ未来……咲の未来を見落としていた。

こんなに近くにいたのに。
紛れもなく、優と俺で救った命なのに。
なんで、目がいかなかったのか。

喉の奥がぐっと苦しくなって、目頭が熱くなった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ