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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第9章 アメとムチと無知



「咲、部屋行くぞ」

優に声をかけられた。

「う、うん……」

わたしは部屋に行こうと言われて、自分の部屋の方へ歩きだそうとしたが、優に手を引かれる。
連れて行かれたのは、優たちの部屋の方だった。
春ちゃんが先回りして、ベッドの上にバスタオルを敷く。
なんか嫌な予感がして、部屋の入口で固まった。

「おいで」

春ちゃんが先にベッドに腰掛けて、手招きする。

優に背中を押されて、渋々部屋へ入った。
座らされたのは、バスタオルの上。
わたしを真ん中にして、優と春ちゃんもベッドに腰掛ける。

嫌な予感は止まらない。

「大事なお話と、約束。これが守れたら、夏休み、海に行くからね」

春ちゃんの前置きを聞いて、恐る恐る頷いた。
逃げ場のないこの状況で、何となく……何となく、わたしにとって嫌なことをするのはわかっていたから、既に泣きそうだった。

優が、春ちゃんの言葉を継ぐように、話し始めた。


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