優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第9章 アメとムチと無知
「……治療受けない」
泣きながら首を横に振った。
手のひらをぎゅっと握る。治療受けないなんて言ったら、優と春ちゃんが困ることはわかっていた。だからこそ言った。困らせてやると思って。
優はそんなわたしのことを見て、少し冷たい声で言った。
「……それなら、海は連れて行かん。頑張れないと、連れて行かない」
「やだ!! なんで意地悪言うの!!」
泣きながら、優のことを睨んだ。
優は怯まずに、冷静にわたしの目を覗いて言う。
「約束だろ? 俺や春斗との約束だ。意地悪じゃない。これをしないと、咲の体がつらい目に遭う。それをわかった上で放置するのは俺たちにはできない。後でうんとつらい顔する咲なんか、見たくないんだ。わかってくれるか?」
わかってる。
わかってる、わかってるよ……。
優や春ちゃんの気持ちもわかる。でも……。
嫌だと思うことに、積極的になんかなれない。
逃げ出そうと思って、立ち上がろうとすると、春ちゃんに肩を掴まれて、ベッドに横にされた。
悲しそうな顔をして、わたしを見ていた。