優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第10章 夏の訪れ
「……わたし、海行けるの?」
恐る恐る訊くと、春ちゃんは笑った。
ちょっとおどけたような顔をする。
「……ママは良いと思うけれど、パパがなんて言うかしらねぇ……」
「……何それ、どうしたの、その喋り方」
おもしろくなって、わたしも吹き出す。
2人でひとしきり笑ったあとに、わたしはもう一度尋ねた。
「ママ……? ん、春ちゃんは良いってこと?」
並んで歩いて、春ちゃんを見上げる。
春ちゃんは歩く速度を少し落として、わたしの目覗き込んできいた。
今度は、ママじゃなくて、春ちゃんだった。
「昨日、頑張った? 頑張らなかった?」
昨晩のことはあまり考えたくなかったけれど、考えたくないくらいには頑張った、と思いたい。
「……どっちかというと、頑張った、かも……」
春ちゃんから目を逸らす。
笑いながら、からかうように春ちゃんは言った。