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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第10章 夏の訪れ


3人揃って手を合わせた。
味噌汁の湯気やご飯の香りに、自然とお腹が鳴った。

それぞれが、無言で朝食を口に運ぶ。
優は梅干しを、春ちゃんは漬物を、わたしはふりかけを。思い思いに白いご飯を食べていると、春ちゃんが言った。

「……咲、きかなくていいの? 優、今日は仕事で遅くなるよ」

2人の視線が、わたしに向けられる。

「なんだ?」

優はぶっきらぼうに言うだけだった。
それがなんとなく緊張して、背筋が伸びる。言葉が出てこなくて、1口お茶を飲んだ。
冷たい麦茶が、お腹の底に落ちていく。

「……う。うみ……」

呟くように、言った。言葉が、口の中でもつれる。

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