
優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第10章 夏の訪れ
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「……春ちゃん、生理来た」
生理が来たのは、その日の夜だった。
治療をした、ぴったり次の日。
トイレから出て、真っ先に春ちゃんのところへ行く。2人きりなのになぜか小声になってしまう。
予め、生理用品の準備はしていたし、下着もそれ用のものだったので、報告だけになった。
春ちゃんは驚くことなくわたしの目の高さにしゃがむと、顔色を覗き込んだ。
優がいつもしてくれるみたいに、下瞼をめくって色を見る。
「お腹、痛くない?」
春ちゃんの手が、そっと下腹部の辺りに触れる。
その場所は、1回目の治療の時に、酷く痛んでいた場所だった。またあの痛みが来るかもしれないと思うと、少し怖くなって、恐る恐る頷く。
「うん……」
「血は、固まってた? さらさらだった?」
「……塊も出てたかも。でもどこも痛くないよ」
わたしが応えると、春ちゃんはほっとしたような顔をした。どうやら、昨日の治療が少し効いているらしい。
「そう、それなら良かった。お腹痛くなってきたら直ぐ言って。薬で生理をコントロールしてるから、あんまり酷くならないと思うけれど」
