
優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第10章 夏の訪れ
うっすら目を覚ました時には、優の声が聞こえた。
2人で何を話しているのかはわからないが、わたしの生理のことは、優にも報告されたようだった。
「咲のこと、寝かせてくる」
ひと通り春ちゃんから話を聞いた優が、わたしに近づいてくる。
薄目を開けると、わたしの顔を覗き込んだ優と目が合った。
「おかえり……」
呟くような声しか出ない。優は少し心配そうな顔をして、「ただいま」と返す。
「春斗から聞いた。部屋で寝よう」
体に触れられたと思ったら、そっと抱き上げられていた。浮き上がった感覚に少し驚いて、息を止めると、優が囁くように言った。
「今夜は3人で寝るぞ。なにがあっても大丈夫だ」
腕の中にすっぽり埋まる。
体全体が、優の体温に包まれて、その温もりがお腹の痛みにゆっくりと届くようだった。
