
優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第10章 夏の訪れ
そんなことを考えていたら、小さな声が漏れ出た。
「いかないで……」
優は何も言わずに、そっと、布団をめくるとわたしに寄り添うように横になった。
体がつらい時に、誰かと一緒にいる。それだけで安心して、痛みが和らぐようだった。
優の胸に、頭を預ける。
「咲、ここにいる。大丈夫だ」
背中から腰にかけて、ゆっくりと手を動かして、撫でてくれた。
もう少しだけと願った温かさが、直ぐにわたしの体に染み込んでいく。
その優しい手が、大好きだった。
「明日の春斗の手伝いは休め。ゆっくり寝ろ」
そう言われて、ひとつ頷く。
安心すると、眠気の方が強くなって、優の体温の中で目を閉じる。
自分の心臓の音がゆっくりになっていって、気がついたら、そのまま眠りに落ちていた。
