
優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第10章 夏の訪れ
車は学校とは反対方向に進んで、高速道路に乗った。知らない景色が窓の外を流れて、わくわくした。
生まれてから半径2キロ圏内でしか生きてこなかったことに気づかされる。
青い空の下、わたしたちを乗せた白い車が快速で走っていく。
途中、パーキングエリアで優と春ちゃんが運転を交代した。
「無理するなよ。2時間くらい、俺が運転するのに」
優が言いながら後部座席に乗り込む。
「いいの。優、昨日、当直明けだったし。俺も運転してみたくなった」
春ちゃんはそう言いながら、バックミラーを合わせた。発進は、優より幾分か慎重で、ゆっくりだった。
