優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第10章 夏の訪れ
「飲んじゃった」
「飲んじゃったってお前……!」
「だってこうでもしないと、優が飲ませてくれないじゃん。意外と大丈夫だよ」
「大丈夫なわけなかろうが……もう赤くなってるし」
言いつつ優が、溜息をつく。わたしは春ちゃんの赤く染る頬に触れた。
「春ちゃん、ほっぺ、りんごみたいだね」
ほんのり温かくなっていく。春ちゃんはわたしの方を見て、
「へへ」
っと笑った。その笑顔が少年みたいで、少しかわいい。
「へへっじゃないんだよ、ったく、目を離せばこれだから……」
優が声に怒気を含ませる。
「だって優ばっか飲むのずるい」
わたしは2人が言い合うのを見て笑ってしまっていた。春ちゃんは量はあまり飲めないけれど、お酒は好きらしい。