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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第11章 落し物に気づく時

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治療後、咲の寝顔を眺めながら、優と2人で話をする。

「ちょっと今回は、自分で触らせるのは無理だったな……」

前回、次からは自分で触り方を教えようという話はしていたが、そこに達することはなかった。

「あぁ、もう治療受けずに寝ようとしてたしな」

優が呆れたように笑う。
穏やかに眠る咲の顔を見ていたら、ふつふつと割り切れない気持ちが湧いて出た。
感情のいちばん醜い泥沼から、罪悪感が顔を出す。

「……咲に、少し厳しくしすぎた」

そう口にすることで、無意識に自身の罪を軽くしようとしていたのかもしれない。
優はそんな俺を擁護することなく、客観的に自分の意見をぶつけてくる。

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