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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第11章 落し物に気づく時

あの時助けてくれた隣のクラスの子達には、なかなかタイミングが無くて、お礼が言えずにいた。
別なクラスの教室って、なんとなく入るのに勇気がいる。それに、最初に助けてくれた子は、男の子だ。
彼に、クラスの違うわたしが突然、個人的に話をしに行くのは、さらに勇気がいることのような気がした。

それと……

絶対に緊張してしまう自分が想像できた。もともと男の子と親しくするようなタイプではないと、自分でもわかっていた。

さらに、あの綺麗な、茶色の瞳と目を合わせてしまったら……そしたら、上手く話せる自信は全くない。

そんなことも考えて、2人に直接お礼を言うことに、少し臆病になってしまっていた。
なんとか、伝えなくてはと、手紙を書いてみたけれど、名前も知らないので渡しようもない。

春ちゃんに名前を聞くというのも考えたけれど、なんとなくそれは憚られた。
色々考えて、ぐるぐる、もやもやとしたまま、始業式から2日が経過していた。

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