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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第11章 落し物に気づく時

「白河さん、分かりやすく動揺してるね」

「すみません……」

鬼の形相、聞かれてしまった。

今日家に帰ったら、絶対からかわれる。
なんなら優に報告して、優にもなんか言われそうだ。なんかもう諦め半分。いや、でも優だって、春ちゃんに怒られてるし、と、謎の自信がわいてくる。

「しゃべってもいいけど手を動かす、手」

わたしたちは返事をすると、真面目な顔をして朝顔の種を摘んだ。

井田先生は「こりゃ伸ばしすぎたなぁ……」とつぶやきながら、わたしもいっちゃんも届かないような、高いところの種に手を伸ばす。

なんとなく、ずっと真面目な顔をしているのがお互いに笑えてきて、どちらからともなく笑い出してしまった。

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