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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第11章 落し物に気づく時

優は明らかに表情を曇らせて、お茶を啜る。
マグカップが退いた時、眉間に皺を寄せた優が現れた。

「……何処の馬の骨だ?」

「昭和初期か」

「うるせぇ」

思ってもみない典型的な頑固オヤジみたいなセリフが妙に合っていて、吹き出さずにはいられなかった。
優もふっと口元を緩める。まあ、何処の馬の骨でも良いけれど、どんな子なのかは知っておきたいといったところか。

「なーかなか、手強いと思うよ〜。生徒たちの噂によると、学年1位の顔面を持つ子。ちなみに俺は教師の中で1位の顔面ね」

「はぁ……」

おどけたように言うと、優は呆れ顔だった。でもその表情の中に、少し安堵が見えたのは、俺と同じ気持ちだったからかもしれない。

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