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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第11章 落し物に気づく時

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いっちゃんと動物のお世話をするようになって、もうすぐ1ヶ月が経とうとしていたある日。

放課後、1人、教室に残って焦っていた。

西日が傾いて、オレンジ色に染まっていく教室の中、わたしの震える声だけが響いていた。

「ない、ない、ないない」

リュックの中身をひっくり返す。
出てくるものは、教科書、ノート、教科書、ノート……だめだ。ここにはない。

人の居なくなった教室を、焦りながら隈無く探す。掃除でごみ箱に……と考えて、胃の底がひっくり返るような、嫌な気分になる。

どうしよう……。家の鍵、失くしたかもしれない。

優が選んでくれたハチワレ猫のチャームはお気に入りだ。いつも制服のポケットに入れているのに、どこにも見当たらなかった。ポケットに入っていたハンカチを広げたが、出てくる気配はない。

明日は土曜日で学校は休み。今のうちに探して見つけ出さないと、土日は教室には入れない。

家を出る時は確実に持って出た。お昼まではあったはずだ。
……そこまで考えて、お昼休みにトイレに行ったことを思い出す。

ハンカチ使ったから、その時かも。
そう思って、女子トイレを探す。しかし……。

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