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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第11章 落し物に気づく時

「え! 大丈夫?! ……もし帰れなかったら、わたしの家においでよ。友だち連れて帰ったら、うちの親も喜ぶから」

わたしが呟くように言うと、いっちゃんは驚きながら、そう提案してくれた。なんだかほっとしてしまい、少し涙が出る。
鍵のことで心がいっぱいだったわたしは、ようやく、友だちに助けを求めても良かったんだということに気づく。

「うん。いっちゃん、ありがとう。でも多分、大丈夫」

「それなら良いけれど……はやく見つかるといいね」

「うん」

作業しながら、こっそり出てしまった涙を、体操着の袖で拭った。

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