優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第11章 落し物に気づく時
お世話を終えてから、職員室へ戻って行く井田先生を追いかけて、呼び止めた。
「あ、の。……井田先生……。わたし、家の……」
恐る恐る声を出す。井田先生は、なんてことないように振り向いて、わたしの方を見た。
「家?」
「家の鍵…………なくしちゃった……かもしれないです……すみません……」
わたしはそう言うと、俯いてしまった。
井田先生の顔を見るのが怖くて、自分のつま先をじっと見つめる。
先生は、呆れたようなため息をひとつついてから、ふっと笑った。それはもう井田先生じゃなくて……春ちゃんだった。
「……あるよ。ほら」
そう言いながら、わたしの鍵を差し出す。それは紛れもなくわたしのハチワレだった。
なんで、春ちゃんが持ってるの……?
驚いて、顔を上げる。
「え……なんで」
「女子トイレの前に落ちてたって。樫木くんが拾ってくれた」
「か……!」
「あ、の。……井田先生……。わたし、家の……」
恐る恐る声を出す。井田先生は、なんてことないように振り向いて、わたしの方を見た。
「家?」
「家の鍵…………なくしちゃった……かもしれないです……すみません……」
わたしはそう言うと、俯いてしまった。
井田先生の顔を見るのが怖くて、自分のつま先をじっと見つめる。
先生は、呆れたようなため息をひとつついてから、ふっと笑った。それはもう井田先生じゃなくて……春ちゃんだった。
「……あるよ。ほら」
そう言いながら、わたしの鍵を差し出す。それは紛れもなくわたしのハチワレだった。
なんで、春ちゃんが持ってるの……?
驚いて、顔を上げる。
「え……なんで」
「女子トイレの前に落ちてたって。樫木くんが拾ってくれた」
「か……!」