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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ



咲がいない……。



ざわざわと心の中がざらついて、嫌な想像だけが頭の中で駆け巡る。

いや、とりあえず家の中探すのが先だ。

その思考を断ち切るように、俺と春斗の部屋の扉に、手をかけた時だった。

「ん……」

咲の声が、リビングの方から聞こえて、反射で振り向いた。
しかし、帰ってから何も変わらないリビングが、広がっている。

そこに咲はいない。

気のせいではないことを祈りながら、誰もいない空間に、咲の名前を呼んだ。

「咲……!」

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