優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第12章 ふたりの憧れ
テーブルの上に置いていた、コンビニの袋から、パーティーパックのチョコレート菓子を取り出すと、床に座り込んだ。
咲は突然目の前にしっかり座り込んだ俺に、驚いてこっちを見ている。
気にせずに大袋を開けて、ひとつ個包装のお菓子を取り出す。中身を取り出して、咲の目の前で口に入れた。
目の前でチョコレートを食べ始めた俺に、咲は釘付けになる。
「おいしい」
と、少しわざとらしく言ってみると、咲が羨ましそうな目をして、唾を飲み込んだ。
俺はそれを見て、ニヤリと笑う。
「……優、ひとつちょうだい」
おそらく咲は帰ってきてからここにいて、寝て起きてから、何も口にしていなくて、空腹も感じているのだろう。
「だめ、俺が買ってきたから」
と、最大限に大人気ない発言をしてみる。
「ずるいっ……」
咲はむっとしながらも、キラキラした目でお菓子を見つめている。