優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第12章 ふたりの憧れ
そうこうしているうちに、玄関が開いて、春斗が帰ってきた。
「ただいま〜、いやー、飲んだ飲んだ、ソフトドリンク」
陽気な声で言いながら、春斗がリビングに入ってくる。春斗は酒が飲めない代わりに、雰囲気で酔っ払う。シラフの割に酒飲んでる人間と同じテンションで絡んできて、次の日全部覚えているのだから、タチが悪い。
ソフトドリンクかよ……と、内心突っ込みを入れるも、目の前の咲からは目を離さない。
リビングに広がる光景を目にした春斗の頭に、ハテナが透けて見えるようだった。
「……ってか、何してんの、君たち」
座りながらチョコレートを置く俺と、それを辿るように1つずつ食べる咲を見て、今度は春斗が呆れたような顔をする。
「……おかえり、出しといたぞ、春斗」
春斗はその一言で、全てを理解する。
「そういうことね」
酒は一滴も入っていないので、もちろん頭の回転もシラフだ。