優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第12章 ふたりの憧れ
咲の気がお菓子にあるうちに、春斗はそっと咲の背後をとって、抱きしめるように後ろから両手を掴んだ。
「ひぇっ」
咲はようやく、置かれた状況とまんまとはめられた作戦に気づく。すっぽりと春斗の腕の中に収まる咲は縮こまって、恐る恐る俺と春斗を交互に見た。
「つーかまえた。食べ過ぎですよ、お嬢さん」
春斗が咲の耳元で声をかけると、咲が固まった。
「心の準備はできたか?」
俺が咲に尋ねると、
「……これ、食べてから」
と言いながら、咲はチョコレートをぎゅっと握りしめた。