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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ

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「咲」

後ろから、誰かに声をかけられる。
誰の声……?
不思議に思いつつ振り向く。

……?! か、樫木くん……!!

そこには、樫木くんが佇んでいた。
凛とした表情で微笑みながら、こちらを見ている。
わたしは、驚いて息が出来なくて、その場に固まってしまった。
樫木くんはゆっくりと近づいて、わたしとの距離を詰めてくる。

「そんなに、驚かないで」

樫木くんがわたしと向かいあって、笑う。
わたしの真ん前にいる樫木くんは、わたしより頭ひとつ分、身長が高い。見上げるようにして見つめた。
その綺麗な瞳で見据えられて、なおも体は硬直したまま、声も出なかった。
何か言わなきゃ、何か言わなきゃ……。

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