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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ

そうだ、お礼を…………!!
始業式のお礼と、鍵のお礼……。

そう思って口をぱくぱくと動かすも、息が漏れるだけで、言葉という音にはならずに消えていく。

樫木くんが、更に近づいてきて、わたしの視界は樫木くんの胸に遮られる。わたしの背中に、樫木くんの両手がまわる。

……だき……しめられてる……??

それを認知すると、自分の体温だけがぐんぐんと上がっていく。そのせいか、不思議と樫木くんの温度はまったくわからなかった。
どうしていいかわからず、身動きが取れないでいると、樫木くんがわたしを抱く力を強くする。

「待って…………!!」

ようやく、声が出ない魔法のようなものが、解ける。

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