テキストサイズ

優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ

「咲、どうした?」

……熱い。

最初は、夢の余韻で体が熱いのかと思ったが、熱も汗もしばらく引かない。
熱でもあるんじゃないかと思った瞬間に、優から距離をとろうとして、服の裾を手放した。
熱があるってなったら、優は心配するだろうし、病院に行くことになるともっと面倒だ。

しかし、赤い顔は隠せないし、息苦しさも否めない。

優がわたしの異変に気づかないはずもなかった。
布団の中、衣擦れの音を響かせながらわたしに近づくと、額に触れた。
決して冷たいわけではない手が、冷たく感じられて気持ちいい。目をつむって、抵抗するのを辞めた。
上がってしまった息をなんとか整えようとするも、溺れるように苦しくなってしまう。

「熱、あるな。胸、苦しいか」

声も出せずに、頷く。
優はすぐに布団から飛び出ると、聴診器と体温計を持って戻ってきた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ