テキストサイズ

優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ

数分もしないうちに、春ちゃんが戻ってくる。

「咲、起き上がって飲み物飲める?」

体が重い。無理だと思って、首を横に振る。

「無理か〜……」

春ちゃんはそれを確認すると、わたしの頭をそっと持ち上げて、氷枕を敷く。前髪をそっとかき分けて、額にも冷たいシートを貼った。

……冷たい、気持ちいい。

視界がぼやけてきたので、そっと目を閉じる。

「とりあえず、病院だな……」

優の言葉を聞いて、わたしは僅かに首を横に振った。

「……咲、こんな状況でも、嫌がってるね」

春ちゃんが、その様子をみて少しだけ笑う。
春ちゃんの冷たい手が、わたしの手を握る。

「……ほんとに熱いなぁ。この家に来てから初めてだね」

感心したように声を上げる。

「夏からの疲れも出たんだろ。準備したらすぐ向かう」

「了解」

すぐに病院に行く手筈が整えられて、春ちゃんが車を出す。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ