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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ

翌日には、どうにか熱が7度台まで下がってきて、なんとなく飲み物を口にすることができるようになった。

とは言え、そのひとくちめがとても怖かったのは言うまでもない。

「咲、飲み物」

まだ体を起こしているのはだるい。支えがないと、すぐにヘタってしまいそうだった。
春ちゃんに口元まで勧められたストローを咥えられずにじっと見つめてしまう。

軽いトラウマに怯えていた。
吐いてしまったことだけではない。吐いてその後、座薬行きになってしまったことも含めて、嫌だった。

「……そんなに警戒しなくても、大丈夫だから。昨日よりは体、マシでしょ?」

春ちゃんに笑われながらそう言われて、頷く。
恐る恐る口にストローを咥えると、ほんの少しだけ、飲み込んだ。

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