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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ

春ちゃんは、何故かわたしに絵本を読み聞かせたがった。

「退屈でしょ? ネズミが2人でおっきいパンケーキ作るやつか、チョッキ着てるネズミの話、どっちがいい?」

「……なんでネズミ縛りなの?」

「俺が好きだから」

「……なにそれ」

言いながら、笑ってしまった。昨日よりは口角も上がる。調子は戻りつつある。

確かに、一日中横になっているのは退屈で、眠るのには限度があるし、かといって体を起こすことはだるすぎてできない。

「じゃあ、パンケーキの方で」

「かしこまりました」

リクエストすると、春ちゃんはゆっくりと絵本を読み始めた。春ちゃんの声は意外と、読み聞かせに向いているらしい。

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