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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ

『まだ本調子じゃないだろうからね』

と、春ちゃんはわたしのお弁当のご飯の量を、少なめにしてくれていた。おかずもあっさり軽めのものが多かったが、彩りは鮮やかだった。
……さすが、気合いが入っている。
それを見たいっちゃんが、感心したように声を上げる。

「……さっちゃんのママって、料理上手なんだね」

「う、うん」

その料理上手なママは、わたしのクラスの担任とは、口が裂けても言えないので、とりあえず頷く。

いっちゃんのお弁当は、おにぎりが入っていて、端っこに詰められたたこさんウィンナーがかわいかった。

「それ、かわいいね」

と言うと、いっちゃんは照れたように笑う。

「昨日はママが作ってたけど、今日はパパが作った」

「すごいね、日によって代わるの?」

「うん」

いっちゃんもまた、伏し目がちに弁当を食べ始める。
わたしたちはいつも放課後、作業しながら話しているようなことと、何ら変わらない話をしながらご飯を食べる。
でも、ゆっくり座って、いつもより落ち着いて話しができることが嬉しい。

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