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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ

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その日の放課後、いっちゃんと井田先生と3人で畑の土を掘り起こしていた。
井田先生が、畝の外側に、そっとスコップを突き立てる。

「……こうやって、傷つけないように……」

言いつつ、てこの原理でツルの周りの土を掘り出した。ツルを中心に紫色のものが、掘り起こした土から顔を出す。あまりにも鮮やかで綺麗な色に、わたしたちは目を見張った。

……サツマイモだ。

「うわ! わたし、サツマイモ掘るの初めて」

いっちゃんが出てきたサツマイモをそっと持ち上げながら目を輝かせた。

「わたしも。……なんか、じゃがいものときより大物な感じ」

……この瞬間が、すごく感動する。

夏に、井田先生とジャガイモの収穫をした時も、同じようにわくわくしたのを覚えている。

サツマイモは太くて、思った以上の大きさのものがたくさん採れた。井田先生にコツを聞きながら掘り起こす度に、2人で目を見張る。

大きいお芋が出る度に、わたしたちは顔を見合わせて笑った。

「じゃあ、僕はまだ生ってるキュウリを採ってきちゃうから。2人で掘れるとこまで頑張って〜」

言い残して、少し離れたところにあるキュウリの畝まで歩いていく。
わたしといっちゃんは既に掘り当てた芋の土を払いながら、返事をする。

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