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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ


「……どうしたらいいの?」

いっちゃんを真っ直ぐに見つめていた。

「さっちゃんは、どうしたいの?」

除き込まれた瞳、注がれた視線が痛くて、目をそらす。

「……わからないや」

初めてのことに、どうしたら良いのかもわからない。恋のあとには、付き合う、みたいな関係になることがあって、それが結婚に繋がることはわかってはいるけれど……。樫木くんとそうなりたいかと問われると、今のところ全くそうは思わないし、考えるのも小っ恥ずかしい。
ただただ、胸が苦しい。それだけ。

いや、それだけ……じゃないのかも。

「……初恋と来たものか」

いっちゃんは、何故か嬉しそうに笑う。

自分の気持ちだけではわからなくて、いっちゃんにも聞き返す。

「……いっちゃんは、そういう人、いるの?」

好きな人、と聞くには、わたし自身も樫木くんを『好き』とはっきり認識しなくてはいけないことになりそうで、あえて遠回しにそう聞いた。

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