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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第12章 ふたりの憧れ

いっちゃんは、伏し目がちに、でもはっきりと頷く。

「え?!」

いっちゃんをまじまじと見つめる。いっちゃんは少し微笑みながら、ゆっくりと話し始めた。

「……わたしね、小学校の低学年のときから、病気で何回か入院してるんだ。その……これからもずっと付き合っていかなきゃいけない病気で」

今のいっちゃんの元気な姿からは、想像できないような告白に驚いた。少し寂しそうなその表情に、ずっと病気と向き合ってきたいっちゃんを垣間見る。

「1学期も、入院してたんだ。2年になりたてだったから、井田先生もよくお見舞い来てくれてたんだよ」

1学期、入院、井田先生……それをきいて、ピンと来ていた。……わたしもそうだったから。

「……もしかして、付属病院?」

春先、救急車で運ばれて、入院したことを思い出す。井田先生は、わたしのお見舞いだけじゃなくて、いっちゃんの病室にも顔を出していたんだ。

「そう、なんで知ってるの?」

「わたしも1学期の初めの方、ちょっと入院してたから」

「ほんと!? その頃から知り合えてたら良かったなぁ」

いっちゃんはそう言って笑うと、話を続けた。
さっきより、話す声が柔らかくなる。

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