
優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第12章 ふたりの憧れ
「もうね、ずっと小児科でお世話になっててさ。主治医の先生とも長くて。……その、先生が好きっていうか」
考えながらゆっくりと言葉を繋ぐ。
慎重に、言葉を選んで話しているようだった。
少し遠くを見つめるその目に、想いを馳せるという言葉がぴったりと当てはまる。
「……いや、憧れてる。すごく良い先生なんだよ。なんかね、とっても厳しそうに見えるけど、わたしにちゃんと病気のこと教えてくれて、一緒に考えてくれる。こんな大人になりたいなぁって」
わたしは、いっちゃんのその表情を、心底羨ましいと思えた。
誰かを想う、想っている人のことを語る。
恋なんて……そう思って遠くにあった、いや、無意識に遠ざけていた感情。それをしっかり自分のものにしているいっちゃんは、大人びて見えた。
「優先生っていうの、イケメンだよ。健康診断で来てたから、さっちゃんも知ってるかも」
