優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第13章 定期検診のお知らせ
好きなものを好きと、人に伝えること。
これが、今までのわたしにとって、できないことだったんだと思い知る。日常の中で、あまりにも素直に湧き上がってきた『好き』という感情に、気づいても気づかないふりをしていたのかもしれない。
きっと、今までがそうだったから。
気づいても、伝える人がいない。いや、それ以前に、何かを『好き』になることを許されていなかったのだ。
その呪縛のようなものから、ゆっくりと解かれて来たんだと思う。
だから、お祭りに行ってみたいと言えた、海に行きたいと言えた、洋服が選べた、植物図鑑を買うことができた。
樫木くんのこともそう……『好き』なんだ。
優と春ちゃんのことも『好き』だと思ったように、色んなものに『好き』のベクトルを向けていい。
ここでようやく、樫木くんへの『好き』が、身に余っていた恋という感情が、自分の手に収まるような感覚になる。
春ちゃんは、紙袋を返すと、わたしの頭を撫でた。
なにかとても温かい気持ちになって、図鑑の入った紙袋を抱きしめる。
「ご飯にするよ。早く手洗っておいで」
「……うん」
春ちゃんは先にリビングの方へと歩いて行った。わたしもその後を追いかける。
これが、今までのわたしにとって、できないことだったんだと思い知る。日常の中で、あまりにも素直に湧き上がってきた『好き』という感情に、気づいても気づかないふりをしていたのかもしれない。
きっと、今までがそうだったから。
気づいても、伝える人がいない。いや、それ以前に、何かを『好き』になることを許されていなかったのだ。
その呪縛のようなものから、ゆっくりと解かれて来たんだと思う。
だから、お祭りに行ってみたいと言えた、海に行きたいと言えた、洋服が選べた、植物図鑑を買うことができた。
樫木くんのこともそう……『好き』なんだ。
優と春ちゃんのことも『好き』だと思ったように、色んなものに『好き』のベクトルを向けていい。
ここでようやく、樫木くんへの『好き』が、身に余っていた恋という感情が、自分の手に収まるような感覚になる。
春ちゃんは、紙袋を返すと、わたしの頭を撫でた。
なにかとても温かい気持ちになって、図鑑の入った紙袋を抱きしめる。
「ご飯にするよ。早く手洗っておいで」
「……うん」
春ちゃんは先にリビングの方へと歩いて行った。わたしもその後を追いかける。