優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第14章 文化祭
…………それでまぁ、案の定な感じで、話は冒頭に戻るわけだ。
わたしたちは辛うじて出来上がった、人間の食べ物と思しきものを見ていた。
「……食べ物を無駄にしちゃいけないって、ママが言ってた」
恐る恐る、その食べ物に手を伸ばしながら、いっちゃんがぽつりと呟く。
「やめといた方が……」
わたしが止める前に、いっちゃんが手を伸ばした食べ物を口に入れた。
その瞬間に、手元の水を飲み始める。
歪んだ顔は無表情になり、そこから、色んなことを察する。
「あのさ、さっちゃん。大きいサツマイモのまま、1本ずつ売った方がいいかもね?」
それはもうなんと言うか……。
「八百屋?」
「もうそれでいいよーー!!!」
早くもお手上げモードのいっちゃんを横目に、わたしも出来たものを口に含む。
中は火が通っていないのに、外側だけめちゃくちゃな色をしているそれは、本当に、ぎりぎり人間の食べ物だった。
うーん、言うならば……。味わいたくないけれど、言葉を探してしまう。
「……弥生時代の味」
「っはは、何それ!! 昔の人でももう少しマシなの食べてたと思うよ」
いっちゃんが可笑しそうに吹き出す。
わたしはいっちゃんが飲んでた水をもらうと、一気に飲み下した。
わたしたちのお腹の底がグルグル動き出したのは、その30分後の話である。