優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第14章 文化祭
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「何して腹壊した? ……怒らないから言え」
いつもより低い声の優が、わたしの顔をじっと覗き込む。
それもう怒ってるじゃん……という言葉は口に出せずに、青ざめた顔のまま、ソファにうずくまる。
怒気を含んだ声とは対照的に、わたしの背中をさする手は、温かくて優しいからなおのこと恐ろしい。
帰ってきて10分置きにトイレに籠り、ソファで寝るを繰り返すわたしを、優が気にかけないわけがなかった。
当直明けで寝ていると思っていたら、わたしがバタバタとトイレに入る音で目覚めたらしい。
「言え。何食った? 冷蔵庫にあったものか?」
言いながら冷蔵庫の方をチラリと見る。
そうじゃなくて…………。
波のように強まったり緩まったりする痛みのタイミングを見て、弱まった時に呟いた。
「作ったマフィン……サツマイモ……」
「マフィン……? 小麦粉か?」
失敗したのがバレたら恥ずかしい。
こんな時に、変な見栄を張ってしまう。
「うん……外サクサクで、中が火、通ってなかった」
外サクサクは盛った、完全に盛った。焦げてた。黒よりの茶色だった。
……まあ、それは正直どうでもよくて、問題は中に火が通ってなかったところだろう。
「小麦粉は生ダメだろ!!」
……ほら、やっぱり。っていうか、怒らないって言ったからちゃんと言ったのに、怒るじゃん。
内心で優に毒づきながら、ぎゅっと目を瞑る。
優の尋問はまだ続く。
「何して腹壊した? ……怒らないから言え」
いつもより低い声の優が、わたしの顔をじっと覗き込む。
それもう怒ってるじゃん……という言葉は口に出せずに、青ざめた顔のまま、ソファにうずくまる。
怒気を含んだ声とは対照的に、わたしの背中をさする手は、温かくて優しいからなおのこと恐ろしい。
帰ってきて10分置きにトイレに籠り、ソファで寝るを繰り返すわたしを、優が気にかけないわけがなかった。
当直明けで寝ていると思っていたら、わたしがバタバタとトイレに入る音で目覚めたらしい。
「言え。何食った? 冷蔵庫にあったものか?」
言いながら冷蔵庫の方をチラリと見る。
そうじゃなくて…………。
波のように強まったり緩まったりする痛みのタイミングを見て、弱まった時に呟いた。
「作ったマフィン……サツマイモ……」
「マフィン……? 小麦粉か?」
失敗したのがバレたら恥ずかしい。
こんな時に、変な見栄を張ってしまう。
「うん……外サクサクで、中が火、通ってなかった」
外サクサクは盛った、完全に盛った。焦げてた。黒よりの茶色だった。
……まあ、それは正直どうでもよくて、問題は中に火が通ってなかったところだろう。
「小麦粉は生ダメだろ!!」
……ほら、やっぱり。っていうか、怒らないって言ったからちゃんと言ったのに、怒るじゃん。
内心で優に毒づきながら、ぎゅっと目を瞑る。
優の尋問はまだ続く。