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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第14章 文化祭

「いつ作った? 家庭科か?」

「……放課後」

「ったく、春斗は? 何してたんだ」

優の声が纏っている、怒りのゲージがだんだんと溜まっていく。

「……職員室。何かあったら呼んでって」

腹痛の波もだんだん迫ってくる。
またも、ぐるぐるとお腹が動き出した。

「そんで、何かあったんか……。あいつ、帰ってきたら絞める」

優が静かに怒りを込める。
わたしはそれと同時に、一段と強い腹痛に襲われ、顔を歪めた。

「ほら、トイレ行け」

頷いて、トイレへ駆ける。
トイレにこもっていると、玄関から春ちゃんの声がした。

「ただいま〜」

陽気なその声に、トストスと早足で近づく足音。
優が玄関へ向かったらしい。

「春斗!」

優の殺気立った声が、玄関に響く。

優、さっき「帰ってきたら絞める」って言ってたけど……
早く止めなきゃ。
わたしのせいで2人が喧嘩を始めるのなんて見たくない。

そうは思ったものの腹痛はなかなか収まらない。

でも玄関で殴り合いなんてされたらたまったもんじゃない。

「なんだい、帰ってきて早々、どうして怒ってるの?」

やばいやばい、早くトイレから出なきゃ。

「……咲、放課後つくったもの食って、腹壊してる。お前何してた?」

春ちゃんが息を飲むのがわかる。

「……咲、今どこ?」

「トイレ。帰ってきてからずっと10分置きだ」

殴り合いにはならなかったが、玄関にピリついた空気が流れる。それに耐えられなくなった。

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