優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第14章 文化祭
「へ、平気!!!! 平気だよ……」
慌ててトイレから出て、玄関へ駆け出す。
お腹を抑えて、自分が青白い顔をしていたのはなんとなくわかっていた。
玄関にいた、春ちゃんと優が一斉にわたしの方を見る。春ちゃんが驚いたような、心配するような、そんな目をしていた。
玄関に、さっきとは違う空気が流れたものの、事態がぐっと好転することはない。
「咲。嘘つくな」
優が、怖い顔をしてこちらを見ていた。
「……ごめん」
春ちゃんが落ち込んだようにつぶやく。
そもそも、全部春ちゃんのせいではないのだ。
料理できないのに、わたしといっちゃんで頑張ろうとしてしまったのも悪かった。腹を壊すくらい、そのくらいのことだ。
「だ、大丈夫。失敗くらいあるよ」
わたしの作った笑顔は、腹痛ですぐに歪む。
しゃがみこもうとしたところを、優に抱きとめられた。足が浮いて、腕の中にすっぽり埋まる。
背中が、優の腕に支えられた。
「……無理して笑うな」
優の体温で、腹痛が持ち直す。自分の足で立たなくても良いだけで、こんなにも楽なのかと感じた。
色んな気持ちをないまぜにしたような顔で、優はわたしの顔を覗きこむ。
「ごめんなさい……。こんなことになって。優と春ちゃんに喧嘩までさせて……」
言いながら、不安で泣きそうになっている自分に気づいた。
呟いた瞬間、一瞬だけ、優の表情に青い色が混ざって、小さなため息が、わたしの耳にかかる。
それは、決して呆れているような雰囲気ではなかったから、少しほっとした。
そこからの記憶はあまりない。
慌ててトイレから出て、玄関へ駆け出す。
お腹を抑えて、自分が青白い顔をしていたのはなんとなくわかっていた。
玄関にいた、春ちゃんと優が一斉にわたしの方を見る。春ちゃんが驚いたような、心配するような、そんな目をしていた。
玄関に、さっきとは違う空気が流れたものの、事態がぐっと好転することはない。
「咲。嘘つくな」
優が、怖い顔をしてこちらを見ていた。
「……ごめん」
春ちゃんが落ち込んだようにつぶやく。
そもそも、全部春ちゃんのせいではないのだ。
料理できないのに、わたしといっちゃんで頑張ろうとしてしまったのも悪かった。腹を壊すくらい、そのくらいのことだ。
「だ、大丈夫。失敗くらいあるよ」
わたしの作った笑顔は、腹痛ですぐに歪む。
しゃがみこもうとしたところを、優に抱きとめられた。足が浮いて、腕の中にすっぽり埋まる。
背中が、優の腕に支えられた。
「……無理して笑うな」
優の体温で、腹痛が持ち直す。自分の足で立たなくても良いだけで、こんなにも楽なのかと感じた。
色んな気持ちをないまぜにしたような顔で、優はわたしの顔を覗きこむ。
「ごめんなさい……。こんなことになって。優と春ちゃんに喧嘩までさせて……」
言いながら、不安で泣きそうになっている自分に気づいた。
呟いた瞬間、一瞬だけ、優の表情に青い色が混ざって、小さなため息が、わたしの耳にかかる。
それは、決して呆れているような雰囲気ではなかったから、少しほっとした。
そこからの記憶はあまりない。