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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第15章 文化祭(後編)

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いつかの屋上に、今度はいっちゃんと2人でいた。
優から正式に許可がおりて、点滴も外れたいっちゃんが厚手のコートを羽織って、屋上にいた。

「優先生、厳しいんだもの〜、やっと自由になれたよ」

大きく伸びをするいっちゃんに笑いかける。
優の厳しさはよく知っているから、2人でこっそりと愚痴をこぼす。

「治療のことになると厳しいよね」

「あ、やっぱりそうなんだ」

「まぁ、家では春ちゃんの方が怖いけどね」

あ、また春ちゃんって言ってしまった。そう思ったらすぐに、いっちゃんがくすくす笑った。

「……ねぇ、さっちゃん」

「ん?」

「春ちゃんって、もしかして、井田先生?」

思わず言い当てられて、慌てだしたわたしに、いっちゃんはさらに笑う。

「わ!えっ……なんで」

「なんとなく。井田先生が、優先生の親友だって話は聞いてて、さっちゃんが優先生と暮らしてるなら、もしかしたら井田先生とも暮らしてるのかなって。……そっか、井田先生、家だとママなんだね」

「いっちゃん、井田先生には絶対言わないで!!」

「わかってるよ、秘密ね」

「うん……ほんとに厳しいの。寝ないとすぐ怒るし、ご飯は残すなって言うし……たまに愚痴聞いて欲しい」

「お易い御用」

ひとしきり2人で笑ったあとに、いっちゃんが切り出した。


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