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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第4章 それぞれの午後7時

「あ? お前はいいよな、こんなに良い学校に、タダで通えてよ。俺の子どものころなんてな」

もう一発。

お腹から鈍い音が体中に響いた。

まずい、殺される。

いつもより強い力に、死の恐怖を感じた。
わたしの存在自体が、もう彼に十分な刺激を与えている。頭の片隅がどこか冷静で、カッとなって殺人を犯す人ってこういう思考なんだと思っていた。

「飯もまともに食えなかったよ」

わざと、制服を汚すように、男が唾を吐く。
制服を汚されることへの嫌悪感が、心の中に満ち溢れる。


わたしは、なんの努力もなしに学校へ行くことを勝ち取ったのではない。


家庭環境が劣悪でも、勉強がしたかった。



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