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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第4章 それぞれの午後7時

小学5年生の冬、わたしは母に、最初で最後と決めたお願いをした。私立の中高一貫校を受験させてほしい、と。

言った瞬間は、母にすら殴られた。

でも、この家にはお金がなかったから、入試1位だと学費が免除になることを話すと、掌を返すかのように態度が変わった。中学に入る前に猛勉強した1年間だけは、わたしに誰も手を出さなかった。
そんなことは生まれて初めてだったと思う。
子どもひとりを中学に行かせるお金が、この家には無かったのである。

生きるためにも、ちゃんと勉強しなくちゃ……
物心着いた時から母が男を取っかえ引っかえするのを見て、そう感じていた。


しかしその取り替えが効く男に、わたしはいま、殺されようとしている。

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