優しく咲く春 〜先生とわたし〜
第16章 3人の年越し
「……それで、咲、昨日のこと……どこまで覚えてる?」
ゆ、夢だったのではないのか……?
どこまで? ……どこまでって…………。
曖昧な記憶をさかのぼる。
春ちゃんと喧嘩して、無言でご飯を食べて、部屋で数学やってたら、優がおやすみを言いに来て……。
でも……そのあと眠れなくて……治療のことを思い出して……。
実際に、触れてしまったことに思い当たって、一気に顔が赤くなる。
これはさすがに、夢だったと思いたいし、口にするのが恥ずかしくて誤魔化そうとした。
「……ね、寝る直前のことは、覚えてない……」
頭まで布団を被る。
「じゃあ、なんでここにいると思う?」
「わ……わからない」
あたふたと思考をめぐらすうちに、今度は優がわたしに言った。
「俺が連れてきた」
寝ていたと思っていたら、起きていたらしい。
優も、わたしの方に寝返りを打って、挟み撃ちにされる。
とてもじゃないけど逃げられない緊張感に、緩んだ体が固くなっていく。
つまり。
つ、連れてきたということは…………
わたしは部屋に寝ていたということで…………
部屋に寝ていたということは……
その、あの……ちょっと自分で触ったことも、現実なの……???
でも、ズボンとパンツ……ちゃんと履いてるのは…………。