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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第16章 3人の年越し

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緊張しながら診察室に入ると、早乙女先生が笑顔でわたしを出迎えた。

「1ヶ月でここに来るなんてって、思った?」

早乙女先生は、内心をピシャリと言い当てる。
わたしは苦笑いしながら頷いた。
優が予約をしたから、多分だいたいのことは優を通して知っているだろう。
それもあって、恥ずかしくなって俯いた。

早乙女先生は、カルテを広げながら、わたしにいくつか質問を投げかける。

「今回の生理痛はどうだった?」

「……少しだけ」

「薬飲んだら収まったかな?」

「はい」

ペンを走らせながら、早乙女先生は穏やかに質問を続ける。

「ひとりで触ったのは、生理の2日前の夜だね」

「……はい」

「自分でいけた?」

優と同じことをきかれ、おずおずと無言で頷いた。顔が赤くなって、先生の顔を正面から見られない。
そんなわたしを見て、早乙女先生はふっと笑顔を漏らす。

「恥ずかしいかもしれないけれど、とっても大事なことだよ。じゃあ、まずエコーで診てみようか」

「……はい」

ベッドに横になると洋服を捲られる。
早乙女先生は機械にジェルをつけると、お腹の様子を隅々まで診ていく。

前回は、優も春ちゃんもいたけれど、今回は早乙女先生と2人きり。緊張してまばたきを繰り返すと、早乙女先生はわたしに声をかけた。

「大丈夫、リラックスしてくれる?」

深呼吸を何度かすると、エコーが終わった。
何枚か写真を残して、早乙女先生はわたしに、

「もう大丈夫だよ」

と言った。

「血塊、今日はなさそうだから、処置はなし。澤北と井田も来てるんでしょう? わたしから説明するから、ここへ呼ぶね」

処置なし……ってことは、あの椅子座らなくていいってこと?
不安でキョロキョロしていると、早乙女先生が言った。

「そんなにあれに座りたかった?」

冗談じゃない、と思い頭をブンブン横に振る。

「嫌です、絶対……!!」

早乙女先生は、笑いながら「わかってるよ」と言う。

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