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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第16章 3人の年越し

それから、ベッドに座ったわたしの顔を真剣に覗き込むと、話し始めた。

「あのさ、咲ちゃん。楽させてあげて」

「楽……?」

早乙女先生の言った意味がわからなくて、呟く。
早乙女先生は頷いた。

「うん。パパとママに。思春期の女の子の体を触るのは負担が大きいのよ。これからは咲ちゃんひとりでできるから、もう家で治療のめんどう、みてもらわなくていい。……楽、させてあげて」

『負担』という言葉をきいて、春ちゃんの苦しそうな顔を思い出していた。
そうか……、わたしがひとりでできるようになれば、その分、優と春ちゃんの気持ちが楽になるんだ。

恥ずかしい、後ろめたいことをしてしまったという気持ちがなくなるわけではなかったけれど、少しは気持ちが楽になったというか……。

「わかりました」

しっかりと頷くと、早乙女先生はにっこり笑った。

「ひとりで触ると、最初の方は上手く血塊が出ないと悪いから、来月も診せてくれる?」

「……来月もですか……」

「大丈夫よ。念の為だからね」


渋々頷くと、診察室にノックの音が響いた。
優と春ちゃんが入ってくる。

「お疲れ様です。……大丈夫でした?」

「失礼します、こんにちは」

優が早乙女先生に尋ねる。

「うん。いまから説明するから、とりあえずかけて」

……なんとなく、診察室に入ってきた2人の雰囲気が、いつもと違う気がして、気になってしまう。

早乙女先生が、わたしの体の状態と、今のところ心配がないこと、しばらく定期検診をマメにすることを伝える。

……春ちゃんは、ずっと黙って聞いていた。

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