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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第4章 それぞれの午後7時

今なら出られる。
玄関の扉を押し開けると外へ出て、走り出した。

「おい!!ふざけんな!!クソガキ!!!」

酩酊して座ったまま、叫ぶことしかできない男の声。
わたしは振り返らずに、足を動かした。
行先もなく、走り出す。全力を出しているのに、全然スピードが上がらず、息だけが切れていく。

とにかく、学校の方へ。
あの家から離れなきゃ。

涙を堪えながら暗い夜道をひたすら走る。
学校が見えてきたところで、足がもつれて倒れ込んだ。
肩で息をしながら、体をもう動かせないことに悔しくて涙が出た。お腹から胸にかけて、痛みが広がり、苦痛に顔を歪める。

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