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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第4章 それぞれの午後7時

生まれた時から、わたしには既に父親がいなかった。しかし1度だけ、わたしの目の前に、わたしの父だという人物が姿を現したことがある。
優しそうな人だった。『笑って生きてね』と言っていた。

もし、父についていけるような人生だったら……。間違いなく、違った景色が見られたと思う。

死ぬ前には笑えないな。

遠くから、誰かがやってくる。

どことなく父に似ているその人は、わたしに「目を開けろ」と言っている。

わたしが意識を飛ばすのは、時間の問題だった。

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