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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第17章 願いごと


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参道を抜けたところに広い公園があって、そのベンチに2人で腰掛ける。
何となくほっと息をついた。

優と一緒に、たい焼きの紙袋を覗き込む。

「カスタードはひとつ、春斗に。でも今日は二日酔いだから食べないかもな。咲、どれがいい?」

「うーん、こしあんがいい」

優からたい焼きを受け取る。頭から食べようと思ったけれど、まん丸の目が何かを訴えるようで、やっぱりちょっとかわいそうだった。ふっくらしたお腹にかぶりつく。

「いちばんおいしいところからいったな」

わたしの様子を見届けながら笑う。
優は頭から、つぶあんのたいやきをかじった。

「おいしい……」

甘過ぎないあんこは優しい口当たりで、外がサクサクの生地に包まれていた。
温かいものを食べると、体が内側から温まるようだった。

自然と、頬が緩んでしまう。

ゆっくりと2人でたい焼きを食べたあと、もう歩くのかなと思って立ち上がったわたしに、優が言った。

「咲」

「ん?」

いつもより、噛み締めるように名前を呼ばれた気がして、振り向く。優は立ち上がらずに、わたしを見ている。

もう少し座っていた方がいいのかな。

そう思って、わたしは優の隣に座り直した。

「寒いか?」

「ううん」

春ちゃんに厚着を促されただけあって、そこまで寒さは感じない。真っ青に晴れた空が、気持ちをどこまでも穏やかにしていくようだった。




そこに、唐突に割って入った、晴天の霹靂……。







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