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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第4章 それぞれの午後7時

しかし、鍋をかき混ぜながらぼんやりしていると、すぐに、今日あったことを考えてしまった。

白河さん、大丈夫かな。

優は、検診を終えて、迷いなく児童相談所に通告した。児童相談所は通告して2日以内に、彼女の生存を確認することになる。

「疑いの時点で、通告するのがベストだっただろ」

事後、そう言われて、久しぶりに軽めのげんこつをくらった。大学時代はポカをやらかす度にやられていたけれど、最近はめっきりなかった。

彼のその判断力と迷いのなさは、いつだって羨ましいと思ってきたところである。学生だったときも、彼のそういうところが際立っていて、優秀だった。
同期だけれど、一歩先を行く彼に、いつでもついていくような立場でいた。俺が彼を、頼りすぎていたとも思う。
今日だって、確証が得られる健康診断まで待つ、という選択をして、結局、優に判断を委ねてしまった。

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