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優しく咲く春 〜先生とわたし〜

第18章 揺れる日々

夕食を作っている最中に、咲はようやく目を覚ました。心細そうに、自室のドアから半分だけ顔を覗かせて、こちらを見ていた。

「……おかえり」

と小さな声がこちらに向かって発せられた。
いっぱい泣いたらしい。少し目が腫れていて、痛々しさを感じた。

「ただいま。咲、ご飯食べられる?」

なんでもないふうに、少し口角を上げる。

「少しだけ……」

「うん、じゃあ一緒に食べよう。もうすぐできるからね」

小さく頷いた咲のもとへ、優がそっと近づく。

「起きたか。腹は? 痛くないか?」

言いながら咲の目の高さにしゃがみこみ、下腹部に触れると、咲が顔を歪ませた。

「……トイレ、行ってくる」

「あぁ。ご飯食べたら薬飲もう」

足早にトイレへ姿を消す咲の様子を、視界の端に入れながら、夕食の支度をする。
優が食卓に食器を並べながら、呟くように言った。

「大丈夫だ、春斗。そんな顔するな」

「……ごめん」

優に言われて、はっとして頬に触れると、自然と笑みがこぼれた。




久しぶりに、3人で夕食を摂る。

ぼーっとして箸を動かすのが遅くなる咲に、声をかけ、なんとか半分くらいまでご飯を食べさせた。

「咲、眠い?」

薬を飲み終えたのを確認すると、そっと顔を覗き込んだ。ふるふると力なく首を横に振るも、目はとろんとしていて、今にも寝てしまいそうだった。
午後いっぱいを寝て過ごし、更に夕食後も眠そうにしている咲の様子が気になった。

「寝ようか」

無理させる必要も無い。
頷く咲の手を引いて、2人部屋の方へと連れて行った。

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